特定技能人材の日本語教育、何を選べばいいか — 方法別の比較と「続く」設計
先に答え
- 特定技能の従業員に日本語を学んでもらいたい。ただ、日本語学校、オンラインレッスン、eラーニングと選択肢が多く、費用感も続けやすさもばらばらです。何を軸に比べればよいか、迷うところです。
- 見るべきは、費用がどういう構造で発生するかと、現場の勤務と両立して試験日まで「続くか」です。教材の優劣は、その次です。その手前に、1号の従業員には、会社が必ず行う日本語学習の支援があります。
- 方法選びの前に押さえてほしい前提も、もう1つあります。人は、覚えても忘れます。外国人材の日本語教育では、この当たり前の性質が見落とされがちです。
この記事は、日本語教育の方法の比較です。社内での進め方は「特定技能2号に会社として合格させる方法」、サービスを選ぶときの質問リストは「特定技能2号の試験対策の選び方」に分けました。
1号の義務的支援「日本語学習の機会の提供」は、何をすれば足りる?
次の3つのうちいずれか 1つを、本人の希望に基づいて行えば足ります。出入国在留管理庁の「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」(令和7年4月1日一部改正)が、そう定めています。
- ① 住んでいる地域の日本語教室や、認定日本語教育機関などの入学案内を渡す。必要なら入学の手続きに同行して手伝う
- ② 自習用の教材やオンラインの日本語講座の情報を渡す。必要なら教材の入手や、講座の利用契約を手伝う
- ③ 本人と合意したうえで、会社などが登録日本語教員等と契約し、日本語の講習を受ける機会をつくる
案内や手続きの補助、教員選びにかかる費用は、会社か、支援の全部を委託した登録支援機関が負担します。本人に過度な学習費用がかからないよう配慮することも、運用要領に書かれています。
| 区分 | 例 | 扱い |
|---|---|---|
| 義務的支援 | ①〜③のいずれか | 必ず行う。行わない場合は支援計画を適正に実施していないことになる |
| 任意的支援 | 社内で日本語講習を企画・運営する/試験の受験を支援し、合格者を優遇する/学費や教材費を会社が負担する | 行うことが望ましい支援。ただし支援計画に記載した場合は、実施する義務が生じる |
出典: 出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」(5)日本語学習の機会の提供・第1の総論(2026年9月25日確認)
情報を渡すだけでも、義務は果たせます。ただ、それで2号の試験に受かるかは別の問題です。運用要領も、習得の状況に応じた「適切かつ継続的な学習の機会」の提供が必要だと書き添えています。しかも2号になると、支援の対象から外れます。合格まで導く仕組みは、義務とは別に会社が考えることになります。
うまくいくかは「時間確保」と「継続」でほぼ決まる
うまくいかない原因のほとんどは、教材の質にありません。シフト勤務の現場では、机に向かうまとまった時間がそもそも取りづらいものです。学び始めても、繁忙期に一度途切れると、そのまま再開されません。つまずくのは中身より手前の、「勉強する時間が確保されているか」「それが試験日まで続く設計か」という段階です。
方法を選ぶときに問うべきは、「自社の勤務実態で続けられる形はどれか」です。
4つの方法を、費用の構造と続けやすさで比べる
企業が用意できる方法は、大きく4つ。費用の発生のしかたも、続けるための条件も、それぞれ違います。
| 方法 | 費用の構造 | 続けやすさの条件 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 日本語学校(通学) | 授業料 + 通学の時間コスト。時間割は固定 | 決まった曜日・時間に現場から人を出し続けられるか | シフトに融通が利き、通学圏に学校がある |
| オンラインレッスン | レッスン単価 × 回数 × 人数 | 講師との日程調整が続くか。会話練習には強い | 会話力を優先したい。対象が少人数 |
| eラーニング(動画視聴型) | 月額 × 人数 | 視聴が「流し見」になりやすく、覚えたかの確認を別に用意できるか | 多くの人に基礎知識を学んでもらいたい |
| 記憶アプリ + 伴走 | 月額 × 人数 + 運用の設計 | 1日15〜25分を毎日。スマホで隙間時間にでき、学習ログを会社側が見られる | 試験合格の期限があり、現場との両立が課題 |
4つは排他ではありません。会話はレッスン、語彙・知識はアプリと、役割を分けて併用する手もあります。
人は覚えても忘れる。だから思い出す仕組みが要る
どの方法を選んでも、覚えたことは復習しなければ忘れていきます。研修を1回行い、テキストを1周させても受からないのは、本人の努力不足とは限りません。試験で問われるのは、一度覚えたことがあるかより、試験当日に覚えている状態を保てているかです。
特定技能2号や介護福祉士の試験には、分野によってはふりがなのない専門用語、広い出題範囲、過去問がないという特徴があります。突き詰めれば記憶量の勝負です。だとすると教育の設計には、「教わる場」に加えて「忘れる前に思い出す仕組み」が必要です。
その仕組みを担う道具として、私たちは記憶定着アプリMonoxer(モノグサ株式会社・累計学習回数84億回)を教材の土台に使っています。独自のAIが一人ひとりの記憶・忘却状況を解析し、一人ひとりに合わせた問題と難易度で出題します。学習者は問題を解きながら憶えるので、「流し見で終わった」が起きにくくなります。覚えた状態を保つところまでを、学習の一部として扱います。
日本語教育の現場での使われ方を、公開されている導入事例から2つ紹介します。
- ユニタス日本語学校(帝京大学グループ) — 45カ国以上・約1,100人以上が学ぶ日本語学校です。授業の冒頭5分をMonoxerでの語彙学習にあて、残りの学習は自宅で進めて記憶度を高める運用です。非漢字圏の学生が多いN3レベルのクラスでは、利用クラスと非利用クラスでテストの平均点に約8〜10点の差が表れ始めたと報告されています。「全くやらない学生はいなくなった」という学習習慣の変化も語られています。
- ヒューマンアカデミー日本語学校 — 2022年に東京校・大阪校とインドネシア・フィリピンの法人で導入しました。目的は、日本語学習のインプット(知識習得)の質と量を高め、授業をアウトプット中心にすることとされています。
上の2例は、学校・塾を中心に使われてきたMonoxerについて、モノグサ株式会社が公開している導入事例です(出典は記事末)。いずれもMonoxer本体の事例で、当社プログラムの実績ではありません。当社(Monoxer GO)は、このアプリに特定技能2号・介護福祉士向けの教材と模試を載せて、企業向けに提供しています。
「続く設計」にするための3つの工夫
続けるための仕組みは、方法を決めた時点で組み込みます。やる気は当てにせず、どの方法でも使える工夫を入れます。
- 1. 学習時間を業務の区切りに固定する。ユニタス日本語学校の「授業の冒頭5分」がよい見本です。朝礼のあと、休憩に入る前といった、毎日必ず訪れる業務の切れ目に学習をつなげると、意志の力を使わずに時間を確保できます。「空いた時間にやっておいて」では、時間を確保したことになりません。
- 2. 進捗を見る場を、先に予定に入れる。週に一度は学習ログを見て、月に一度は模試や小テストで理解度を測ります。確認の場を会社側のカレンダーに先に置くと、学習が「本人任せの善意」から「業務の一部」に変わり、止まっている人も早く気づけます。
- 3. 締切を人工的に作る。本番の試験は年に数回しかなく、遠い締切だけでは日々の学習は動きません。間に模試を置いて「次の測定日」を常に1〜2か月先に持っておけば、学習が締切に向けて回り始めます。測定の結果は、フォローが要る人の特定にもそのまま使えます。
続かないのは、多くの場合この種の仕掛けがないからです。仕掛けさえあれば、方法の差はかなり吸収できます。会社側が毎日・毎週・毎月に何を見るかは「特定技能2号に『会社として』合格させる方法」で具体的にまとめています。
試験の日程から逆算して方法を選ぶ
ゴールの試験日は動かせないので、教育の設計は締切からの逆算になります。
- JLPT(日本語能力試験)は年2回(7月・12月)しかなく、結果は約2か月後です。2026年12月の回の国内申込みは締め切られたので、これからなら2027年7月の回です。外食業などの2号はN3以上が要件です(飲食料品製造業・ビルクリーニングは2027年4月1日以降・CEFR B1判定に限る)。そのため、JLPTの日程が計画全体でいちばんの制約になります。
- 技能試験の多くはCBT(パソコンで解く方式)で、日時を予約できます
- 介護福祉士国家試験は年1回・毎年1月です。不合格なら次は1年後。パート合格制を使った複数年の計画も選択肢です
「試験の何か月前から始めるか」を考える前に、申込期限と結果待ちまで含めた日程表を作り、そこに収まる方法を選んでください。分野ごとの日本語要件は「特定技能2号の日本語要件は、分野によって違います」で確かめられます。
費用の考え方と、使える可能性のある助成金
費用は「方法の構造(上の表) × 人数 × 期間」で決まります。単価の安さだけで選んで続かなければ、やり直す分だけ高くつきます。期間を区切り、「この試験日までに仕上げる」前提で総額を比べてください。
公的な支援もあります。厚生労働省の人材開発支援助成金は、事業主が雇用する労働者に訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です。「人への投資促進コース」には、定額制訓練(サブスクリプション型)を対象とする仕組みもあります。ただし対象となる訓練の要件や事前の計画届など条件があるため、自社で使えるかは管轄の都道府県労働局への確認が必要です。助成率・10時間要件・語学の扱いは「日本語教育に人材開発支援助成金は使えるか」にまとめています。
外国人材の教育体制を社内で説明する材料には、当社の「外国人労働者教育白書 2026」(無料ダウンロード)もご活用ください。外国人材の登用と教育プログラムの実態を、公的統計と調査からまとめています。
私たちが提供している形
当社(Monoxer GO)のプログラムは「記憶定着アプリ + 伴走」の型です。特定技能2号・介護福祉士向けの分野別教材と本番の形式に合わせた模試をMonoxerに載せ、海外で『ゼロからJFT-Basic合格まで3か月』のプログラムを運営してきた講師が学習計画を設計します。記憶度などの学習ログを会社と一緒に見ながら、遅れの検知とフォローまで含めて運用します(期間は最短3か月〜、介護福祉士は最短6か月〜。現在の日本語力によります)。
- 教材はベトナム語・ミャンマー語・インドネシア語・ネパール語で用意します(分野・教材により準備期間をいただきます)。母語でも学べるので、日本語力がまだ低い人も最初の段階でつまずきにくくなります。
- 学習は1日15〜25分を毎日。現場の隙間時間で回すので、まとまった研修時間を確保しなくても進められます
- 進捗は学習ログで見える形にします。「やっているつもり」と実際の記憶状態のずれを、会社側が早く把握できます。
分野・人数に合わせた進め方の相談や資料請求はこちらのフォームから(無料)。教育方法を検討中の段階でも構いません。
出典
- [1]出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」(義務的支援・任意的支援の区別/(5)日本語学習の機会の提供・令和7年4月1日一部改正・PDF・2026年9月25日確認)
- [2]モノグサ株式会社 活用事例「ユニタス日本語学校 東京校」(45カ国以上・約1,100人以上/授業冒頭5分の運用/N3クラスの平均点差約8〜10点・2026年8月確認)
- [3]モノグサ株式会社 プレスリリース「ヒューマンアカデミー日本語学校、学習プラットフォーム『Monoxer』を導入」(2022年・2026年8月確認)
- [4]厚生労働省「人材開発支援助成金」(訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成・人への投資促進コースの定額制訓練・2026年8月確認)
- [5]日本語能力試験 JLPT 公式サイト(年2回の試験日程・2026年8月確認)
- [6]日本国際教育支援協会 JLPT 国内受付サイト(2026年第2回の申込受付終了・2026年9月24日確認)
- [7]出入国在留管理庁 飲食料品製造業分野 要領別冊(2号の日本語能力試験N3以上・CEFR B1判定に限る・令和8年8月28日一部改正・PDF・2026年9月24日確認)
- [8]OTAFF 飲食料品製造業 特定技能2号 評価試験(CBT方式・2026年9月24日確認)
従業員が解けるようになるべきN3の問題
従業員が最終的に解けるようになるべき問題を見ておくと、必要な学習量の感覚がつかめます。JLPT N3の模擬試験から、文字・語彙、文法、イラストつきの聴解(音声あり)を1問ずつ、計3問抜粋しました。
その場で体験
JLPT N3 — 実際の模試から抜粋(聴解はイラスト・音声つき)
文字・語彙 / 1問目(全3問)
よくある質問
Q.特定技能1号の義務的支援「日本語学習の機会の提供」は、何をすれば満たせますか?
本人の希望に基づいて、次の3つのうちいずれか1つを行えば満たせます。①地域の日本語教室や認定日本語教育機関などの入学案内を渡す。②自習用の教材やオンライン講座の情報を渡す。③本人と合意のうえで、登録日本語教員等と契約し講習の機会をつくる。必要に応じて手続きも手伝います。案内や手続きの補助、教員選びの費用は、会社か、支援を全部委託した登録支援機関が負担します。社内講習や学費の負担は任意的支援ですが、支援計画に記載すれば実施の義務が生じます。
Q.日本語学校とアプリ、どちらを選ぶべきですか?
二択ではありません。会話力はレッスンや学校、語彙・知識の定着はアプリと、役割を分けた併用が無理のない形です。判断の軸は「自社の勤務実態で試験日まで続けられるか」。通学の時間が取れないのに学校を選ぶと、内容以前に継続で止まります。
Q.従業員が忙しくて、勉強の時間がとれません。それでも進められますか?
進められます。まとまった時間を前提にしない設計に変えるのが先です。1日15〜25分×毎日をスマホの隙間時間で回す形なら、現場の勤務と両立しやすくなります。学習ログで「止まっている人」を早く見つけてフォローすることも、継続に効きます。
Q.日本語教育に助成金は使えますか?
使える可能性があります。人材開発支援助成金には「人への投資促進コース」があり、その中の定額制訓練(サブスク型)は経費の一部が対象です。賃金の助成はありません。『日常会話程度の語学の習得のみ』は対象外と例示されています。対象になるかは管轄の都道府県労働局で確認してください。詳しくは記事『日本語教育に人材開発支援助成金は使えるか』で整理しています。
Q.教材は日本語だけですか?母語で学べますか?
母語でも学べます。当社の教材はベトナム語・ミャンマー語・インドネシア語・ネパール語で用意するので(分野・教材により準備期間をいただきます)、日本語力がまだ低い段階の従業員でも、最初の段階でつまずきにくくなります。
Q.どのくらいの期間で合格レベルに届きますか?
当社プログラムの期間は最短3か月〜(介護福祉士は教材量が多く国家試験が年1回のため最短6か月〜)です。現在の日本語力によって変わるため、まず模試で現在地を測ってから逆算することをおすすめします。
改訂履歴(7件)
- 2026年8月12日 — 公開
- 2026年9月24日 — JLPTの次の申込回を2027年7月に更新し、確かめられない通年実施の記述を削除、助成金FAQを定額制訓練の条件に合わせて修正。本文を一文一義に直し、前置きと重複を削った。パート合格の記事と『会社として合格させる方法』への案内を追加。本文を一文ずつ読み直し、長い修飾や括弧に詰め込んだ条件、線表・律速などの語を直して、CBT・記憶度などに説明を付けた。模試の抜粋の問題数を実際の数に合わせた。試験の特徴を「ルビ無しの専門用語」と一律に書いていたのを、分野によって違う書き方に訂正。1日の学習時間の表記を講座一覧と同じ15〜25分に揃えた
- 2026年9月25日 — 1号の義務的支援「日本語学習の機会の提供」で何をすれば足りるかを、入管庁の支援運用要領(令和7年4月1日一部改正)の原文で確認し、義務と任意の違いとあわせて冒頭の節に加えた
- 2026年9月25日 — 一次資料と1文ずつ照らし直し、1件を直した(出典のOTAFFの2号試験名を「評価試験」に訂正)
- 2026年9月30日 — 校正者による校正を反映(35か所)
- 2026年10月4日 — 2号の日本語要件の適用時期(4分野は2027年4月以降)を運用要領別冊の注記で確認し訂正
- 2026年10月8日 — 冒頭に、この記事は日本語教育の方法の比較だと書き、社内での進め方・サービスを選ぶときの質問リストの記事へのリンクを置いた
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