特定技能2号の試験は難しいのか — 5分野の形式差と「難しさの正体」
結論
- 「特定技能2号の試験は、うちの従業員でも受かるものなのか」。受験させるかどうかを判断する場面で、まず知りたいのはここでしょう。
- 先に結論を言うと、この問いに一つの答えはありません。画面で選択肢を選ぶCBTの3択・4択から、紙に日本語で書く記述式、125問の国家試験まで、分野によって形式も、問われる力も別物だからです。
- ただし、どの分野にも共通する「難しさの正体」は3つに絞れます。ルビ無しの専門用語、出題範囲の広さ、そして一度受けたら復習できない設計です。5分野の公式資料で確かめた事実だけで、順に見ていきます。
まず5分野の試験形式を1つの表で
| 分野 | 方式と形式 | 問題数・時間 | 合格基準 | 漢字のルビ |
|---|---|---|---|---|
| 建設(土木・建築・ライフライン設備) | CBT(画面上で選択肢を選ぶ) | 学科40問・60分/実技25問・40分 | 学科・実技それぞれ75% | あり(2025年4月以降) |
| 外食業 | CBT・3択 | 学科35問+実技20問の計55問・70分 | 250点満点の65%以上 | なし |
| 飲食料品製造業 | CBT・4択 | 学科35問+実技15問の計50問・70分 | 200点満点の65%(130点)以上 | なし |
| ビルクリーニング | 紙(学科は○×・組み合わせ・多肢択一/実技は記述式) | 学科50問・60分/実技10問・90分 | 各100点満点中65点(両方の受験が必要) | あり(ただし解答は日本語の手書き) |
| 介護(介護福祉士国家試験) | 筆記マークシート・5肢択一 | 125問・220分(第39回・全パート受験) | 総得点の約60%(難易度で補正)+ 全科目群で得点 | 申請でふりがな付き問題用紙+試験時間1.5倍 |
出典: 各実施機関(JAC・OTAFF・全国ビルメンテナンス協会・社会福祉振興・試験センター)の公表資料。2026年8月確認。介護分野に特定技能2号は無く、長期就労の入口は介護福祉士国家試験です。
同じ「特定技能2号」の看板でも、中身はここまで違います。象徴的なのはビルクリーニングで、1号はテストセンターのコンピュータで選択肢を選ぶCBTでしたが、2号は紙に日本語で書く記述式に変わります。1号に合格した実績は「画面上で正しい選択肢を選ぶ力」の証明であって、2号で問われる力とは別物です。
受験機会の設計も分野で違います。外食業・飲食料品製造業のCBTは試験会場と日時を予約して受けられ、飲食料品製造業は2026年度から通年実施になりました。一方、介護福祉士国家試験は年1回、毎年1月だけ。同じ「不合格」でも、翌月やり直せる試験と、1年待つ試験があります。
難しさの正体① ルビの無い専門用語
技能の知識そのものより先に立ちはだかるのが、問題文の日本語です。分野で条件がはっきり分かれています。
- 外食業・飲食料品製造業 — 試験案内に「漢字にルビは付いていません」と明記。一方で学習用の公式テキストにはルビが付いているため、「テキストは読めるのに本番の問題が読めない」という段差が生まれます。殺菌・歩留り・危害要因といった専門用語を、ルビ無しで読める状態が前提です
- 建設 — 2025年4月以降、試験問題に振り仮名が付されています。読みの負担は軽く、その分、技能検定1級と同等水準とされる中身の理解が問われます
- ビルクリーニング — 問題文にはふりがなが付きますが、解答は日本語の手書き。読める、の先の「書ける」まで求められる唯一の分野です
- 介護(国家試験) — 外国籍の方は申請により、全ての漢字にふりがなを付けた問題用紙と通常の1.5倍の試験時間で受験できます。ただし相手は医学用語と法律の略称です
つまり「日本語の難しさ」は全分野一律ではなく、ルビ無しの読解が壁になる分野(外食・飲食)と、書く力が問われる分野(ビルクリーニング)に分かれます。試験問題の日本語と要件の分野差は「特定技能2号の日本語要件は、分野で違います」で1ページにまとめています。
難しさの正体② 出題範囲の広さと、1号との段差
2つ目の正体は分量です。どの分野も、1号より一段広い範囲を「現場責任者の視点」で問い直してきます。
- 飲食料品製造業 — 公式に示された対策資料は学習用テキスト1冊のみ。ただし本文143ページに13ページ分の索引が付く分量で、1号のテキスト(3章構成・約80ページ)のおよそ2倍です。索引13ページ分の用語量が、そのまま覚える量になります
- 建設 — 出題範囲は学科テキスト1〜4に職長テキスト、区分別の実技テキスト5〜7と束で指定されます。学科と実技は別々に判定され、どちらも75%が基準。捨て分野を作れない構造です
- 介護(国家試験) — 出題は4領域12科目+総合問題の計13科目・125問。どの科目群も0点にできないルールがあり、広い範囲をまんべんなく得点する必要があります
テキストを一度読み切ることは、その気になればできます。難しいのは、索引に並ぶ用語の意味と数値を、試験当日まで覚えた状態に保つことです。範囲の広さは、突き詰めると記憶量の問題になります。
難しさの正体③ 一度受けたら復習できない設計
3つ目は、あまり知られていません。
特定技能2号の試験に、過去問はありません。本試験の問題は公開されておらず、公式に入手できるのはサンプル問題と学習用テキストだけです。農林水産省のQ&Aには、外食業・飲食料品製造業についてサンプル問題を公表していない旨が明記されています。
さらに、受けた後も問題は残りません。ビルクリーニングの受験案内には「受験者に配布した試験問題は、持ち帰ることができません」と明記され、建設でもどの問題を間違えたかや解説は公表されません。不合格だった場合、どこが弱かったのかを知る手がかりは、受けた本人の記憶だけです。
この設計のもとでは「とりあえず一度受けさせて、様子を見て対策する」という進め方が機能しにくくなります。実力を測る機会は、本番の外に自分たちで用意するしかありません。唯一の例外が介護福祉士国家試験で、試験センターが過去の試験問題と正答を公表しています。過去問事情の全体は「特定技能2号に『過去問』はありません」に詳しくまとめました。
分野別の勘所。自社の分野はどこでつまずきやすいか
- 建設 — ルビはあり、読みの負担は軽い分、技能検定1級と同等水準の中身が問われます。学科・実技の別判定(各75%)に対応する、穴のない学習配分が課題です。→ 建設2号試験の解説
- 外食業 — 2023年8月から日本語能力試験N3以上が要件に加わっている分野。技能試験はCBTで日時を選べますが、JLPTは年2回しかなく、こちらが計画全体の律速になります。→ 外食業2号試験の解説
- 飲食料品製造業 — 加熱の中心温度75℃1分以上のような数値を、丸めずそのまま覚える必要があります。2026年度から通年実施になり、受験計画は組みやすくなりました。→ 飲食料品製造業2号試験の解説
- ビルクリーニング — 読めれば選べる試験ではなく、日本語で書く試験。選択式の演習だけでは対策にならず、準備の設計が他分野と別物になります。→ ビルクリーニング2号試験の解説
- 介護 — 2号ではなく介護福祉士国家試験。年1回・13科目の長期戦ですが、パート合格制(A・B・C)の導入で複数年の計画が立てられるようになりました。→ 介護福祉士国家試験の解説
介護に2号が無い理由と国家試験ルートの全体像は「介護に特定技能2号はありません」で解説しています。
では、どう準備するか
3つの正体を裏返すと、そのまま準備の設計図になります。ルビ無しの専門用語は「読める」だけでなく意味の理解まで仕上げる。広い範囲は、試験前の詰め込みではなく毎日の分散学習で回しきる。そして復習できない本番の代わりに、本番形式の模試で事前に実力を測る。
どれも一夜漬けの効かない、記憶量の勝負です。現場の仕事と両立しながら数か月続けるには、本人の意志だけに頼らない仕組みの側の支えが要ります。私たちは、分野別の語彙・知識教材と本番準拠の模試を記憶定着アプリMonoxerに載せ、記憶度などの学習ログを会社と一緒に見ながら進める合格プログラム(最短3か月〜)を提供しています。
出典
- JAC(建設技能人材機構)「特定技能評価試験情報と申込み」(問題数・試験時間・合格基準・試験範囲のテキスト・2026年8月確認)
- 国土交通省「建設分野特定技能2号評価試験 試験実施要領」(CBT方式・2025年4月以降の振り仮名・PDF・2026年8月確認)
- OTAFF(外国人食品産業技能評価機構)外食業 特定技能2号 技能測定試験(3択・計55問70分・250点満点・ルビ無し・2026年8月確認)
- OTAFF 飲食料品製造業 特定技能2号 技能測定試験(4択・計50問70分・200点満点・通年実施・2026年8月確認)
- 全国ビルメンテナンス協会「在留資格『特定技能2号』」(学科50問60分・実技10問90分・記述式・基準点65点・問題持ち帰り不可・2026年8月確認)
- 社会福祉振興・試験センター「第39回介護福祉士国家試験『受験の手引』」ほか(125問・試験時間・パート合格制・ふりがな付き問題用紙の申請・過去問の公表元・2026年8月確認)
- 農林水産省 食品産業分野の特定技能2号に関するQ&A(サンプル問題は公表されていない旨・PDF・2026年8月確認)
実物の形式で「難しさの質」を体験する
ここまでの話を一番早く実感できるのは、実物の形式に触れることです。飲食料品製造業の模試からは、本番と同じ工程図を見て判断する実技問題を。ビルクリーニングの模試からは学科1問を抜粋します(実技の記述式は、本文で見たとおり紙に日本語で書く形式のため、画面上の模試は学科のみです)。
その場で体験
飲食料品製造業 特定技能2号 — 実際の模試から抜粋(実技は工程図つき)
学科試験 / 1問目(全2問)
その場で体験
ビルクリーニング 特定技能2号 — 実際の模試から抜粋(学科)
学科試験 / 1問目(全1問)
よくある質問
Q.どの分野の試験がいちばん難しいですか?
形式が違いすぎるため、一列に並べた比較はできません。ルビ無しの読解が壁になる分野(外食業・飲食料品製造業)、日本語で書く力が問われる分野(ビルクリーニング)、範囲の広さと年1回の一発勝負が壁になる分野(介護)と、難しさの質が分野ごとに違います。自社の分野の形式を確かめるのが出発点です。
Q.日本語能力試験(JLPT)はどの分野でも必要ですか?
外食業・飲食料品製造業・ビルクリーニングの2号は日本語能力試験N3以上が要件です(飲食料品製造業とビルクリーニングは「CEFRのB1相当以上と判定された場合に限る」という但し書き付き)。建設の要領別冊には2号の日本語能力水準の記載がありません。ただし試験問題そのものが日本語なので、記載が無い分野でも日本語の準備は必要です。
Q.過去問を入手して対策できますか?
特定技能2号の試験に過去問はありません。本試験の問題は非公開で、公式に入手できるのはサンプル問題と学習用テキストです。唯一の例外が介護福祉士国家試験で、試験センターが過去の試験問題と正答を公表しています。
Q.1号に合格していれば、2号も同じ形式ですか?
違う分野があります。飲食料品製造業は1号の3択・学科のみ・ルビ付きから、2号では4択・学科+実技・ルビ無しに変わります。ビルクリーニングはCBTの判断問題から紙の記述式へ変わります。1号合格の実績を前提にせず、2号の形式に合わせた準備が必要です。
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